医業経営の視点からみて

医療材料マネジメント

第8回 SPD導入の事例にみるトレーサビリティ実現の課題

座長 上塚 芳郎先生(前東京女子医科大学 教授)

上塚:SPDの業務委託が本来どうあるべきか、という問題も包含しているように思います。やはり、院内のロジスティクスの最適化を今後どう進めるかの視点と議論が益々求められると思います。
SPDにもいくつか異なった種類がありますが、自院に最適なものを選ぶことが大切です。対象とするロジスティクスの範囲については、医療材料に限らず病院で使用する医療用ガスや文房具などもSPDに包含するべきか考える必要があります。
また、目先の材料費の削減も大切ですが、中長期の視点で果たして病院経営は調達業務を事業者任せにして良いのか、議論を深めていきたいと思います。

司:まず、ロジスティクスの範囲についてですが、文房具なども含むケースは多いのですが、病院でも既存のネットカタログが先行しており、そちらの方が安価に手に入ることも多く、価格面での効果は薄いと言われています。千葉県の事例では、薬剤に係る業務も一部事業者が行っていました。
また、SPDの委託業務範囲に調達を含めるかですが、公立病院では構造的に難しいのではないかと思います。ただし、薬剤は『薬剤師』という専門職が責任をもって管理に当たる一方、医療材料はこうした専門職がなく、事務職が扱います。公立病院ですと事務職は2~3年毎で別セクター(例えば水道事業など)との異動を繰り返すため、どうしても医療材料のプロが育ち難くなっています。今後は、調達業務もSPD事業者へ委託するケースが多くなると思います。

関:千葉県と岩手県、そして愛媛県、3件の事例だけでも相当SPDの範囲が多様な印象を持ちました。当研究会でも今後、SPDの業務やトレーサビリティの品質などについて標準的な仕様書を形成できないか議論がありました。それぞれの病院の委託事業に関わりながら、標準化にあたっての意見を教えてください。

司:SPD事業者に期待する委託範囲は、病院によって全く異なります。また物品調達では近年、共同購入への参画を進めている病院もあり、そうした広い範囲をカバーした標準化までは難しいと思います。役務の一部については、可能かもしれません。

関:『トレーサビリティ』に対する実際の現場での意識はどうでしょうか。

司:GS-1コードとの兼ね合いと理解しましたが、いずれの事例でもまだあまり厳密な手法の採用を含め、意識はされていません。

上塚:公的な病院でも、先日お招きした国立国際研究医療センター斎藤室長のように意識的に取り組んでいる例はまだ少ないのですね。

関:SPDを含め、病院の委託業務も地方では採用難と聞きます。特に急性期病院はSPD業務も多忙と思いますが、委託費の関係とスタッフの確保状況はどうでしょうか。

司:委託業務全般に言えることですが、最低賃金がここ数年で随分上がっています。病院からの委託費は概ね横ばいか低廉化ですので、委託事業者も賃金の上昇をどこかでカバーしていたのが実態です。例えば給食事業ではこれまで食材の調達価格を抑えることで賃金の上昇を吸収していましたが、それも限界ですので、以前より高い金額を提示している事例が多いと思います。

上塚:私が以前に勤めていた病院でも、かなり安い金額で委託先と契約しましたが、食材の質が大きく落ちる問題を経験しました。SPD業務も役務提供部分の価格を極端に下げることは、スタッフの定着・安定化、ひいては病院サービスのクオリティにも影響します。結果として病院の責任にも跳ね返るため、スペシャリストが持っている技量をお願いするような意識も今後は病院側に必要かもしれません。

司:院内の人材不足を委託会社に移管する選択肢は今後かなり限られてきます。地方は元々若い人材が不足していますが、院内の仕事は他の業態と比較して必ずしも好条件ではありません。何のために外部委託するのかという優先順位を定めておくことが望ましいと考えます。
先ほどのトレーサビリティについては、どこまで管理するか、また病院側の体制とあわせた検討が必要です。SPD事業者からは必要ロットの単位にまでGS-1コードがついているかというと、現状そうではないと聞きます。

上塚:薬剤は先行して管理が進んでいますが、医療材料は仮に注射器が100本入っている包装があるとするならば、注射器1個1個にはそのバーコード表示がありません。包装単位にしかバーコードが付いてないから、実際には現場で使いづらいかもしれません。本来、データ管理を含めてこれはSPD事業者の技量によるところだと思います。安く労務提供する委託業者もありますが、中長期でみると必ず跳ね返ってきますので、病院も少し意識を変えて安かろう、悪かろう、にならないよう気をつけたいと思いました。

関:これからも標準仕様モデルについてより詳細な検討と議論が必要だと感じました。本日はありがとうございました。

 

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