医業経営の視点からみて

医療材料マネジメント

第8回 SPD導入の事例にみるトレーサビリティ実現の課題

関:今回は「SPD導入の事例にみるトレーサビリティ実現の課題」にフォーカスし、再整備事業のコンサルティングを手掛けるアイテックの司先生より、リアルな現場の実情とSPD導入による生産性向上について意見交換を行います。
まずは司先生より、SPD業務の委託化コンサルティングを担当されたきっかけ、経緯など教えてください。

ITEC病院運営研究会 代表 関 丈太郎(アイテック株式会社 代表取締役)

司 隼人氏 アイテック株式会社コンサルティング本部

司:2018年よりアイテックのコンサルティング事業本部で病院の支援に従事しています。以前は給食委託の会社に勤めていました。そうした経験から、入社後は業務委託関連のコンサルティング案件を広く担当することになりました。

関:SPDコンサルティングの支援事例と、その進捗状況を教えてください。

司:まず、私が関わったSPD導入の業務を3件ほど御紹介します。最初は千葉県内の病院(400床以上)の整備事業で、2020年10月に移転オープンした病院ですが、SPD自体は旧病院から既に導入されていました。
当社の業務は病院の移転新築事業全般の支援ですが、委託事業では仕様書の作成から事業者の選定、稼働までを支援します。千葉の病院では、病院と委託事業者の契約期中の移転オープンであったため、移転の前と後で仕様書の書き分け作業が発生しました。従来よりも、かなり手間がかかったことを覚えています。

関:仕様書の書き分けという作業について、より詳しく教えてください。

司:移転の前後で業務の履行場所が変わりますので、物品の搬送先や対応可能な業務も変わってきます。それを仕様書に反映しなければなりません。
千葉の病院事例では、SPD事業者の業務範囲に鋼製小物類の滅菌業務が含まれていましたが、移転後は更に、看護師の強い要望で内視鏡の洗浄業務も加わりました。SPD事業者もよく受けたと思いますが、委託事業者の守備範囲は病院によって様々です。

二つ目の事例は、岩手県内の病院で、移転新築の案件です。移転新築後の病床数は200床程度で、元々が300床程度あったものからダウンサイジングした案件です。院内の物品管理はSPD業者への委託でなく病院職員が直接行っていました。
岩手県の病院事例では、移転新築前の院内の物品管理は請求伝票や発注データを手作業で入力・集計しており、発注も職員の経験に頼っていました。働き方改革で院内の物流を支える人員の採用難もあり、看護助手が倉庫まで材料を取りに行くのが現実でした。
このような状況を改善するため、当社は移転新築後の病院でSPD業務の委託化を推奨し、総合評価落札方式(費用のみならず提案内容も加味して、業者を選定する方式)で事業者を選定しました。

岩手県の病院では、SPD業務の委託範囲に医療材料の調達業務を含めることとなりました。委託事業者より、医療材料費の具体的な削減額の提示があったとことも決め手となりました。

最後の事例は、愛媛県の病院(200床以上)で同一敷地内での移転新築案件です。SPDは既に旧病院から委託事業者が入っていました。本件では、病院との複数年契約の期中であったことや、別の関連病院を含む、共同契約・共通仕様書となっていた点が特徴的です。業務内容の変更や契約書の反映で、テクニカルな対応に苦労しました。千葉、岩手の事例もそうですが、病院によって全く契約環境が異なることがおわかりいただけると思います。

関:いずれも問題なく契約内容を移行できたのでしょうか。

司:そうですね。委託業者としても営業の一環ですので、積極的に対応していただいた覚えがあります。

今回取り上げた事例は3つですが、いずれの現場でも仕様にない業務対応を行っているケースが多く、各病院での実態把握が難しいところです。よって、仕様書の作成はとても手間がかかりますし、委託事業者の変更は現場の看護師等から強い抵抗ある場合もあります。人的な関係も含めて『ローカル・ルール』が必ずあるのですが、新しい事業者がそれらを把握するまでには時間が掛かるからです。

結果として、SPD業務の委託でも看護師がそれまで担ってきた雑務が業務範囲に入る例が多いと思います。医療従事者が本来業務に傾注できるようにすることは委託化本来の目的ですが、予算との兼ね合いから交渉にあたっては優先順位を決めて取り掛かる必要があります。また、病院側に決断力のある委託事業の取りまとめ役がいるかいないかも大きいと感じています。

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