セミナー・インタビュー

病院経営の多様化と今後の公立病院のあり方~ 東京都立病院の地方独立行政法人化を例に~

日時:2022年7月22日(金)15:30~17:00
場所:日本橋ライフサイエンスビルディング
出席:大道 久先生(日本大学名誉教授、前東京都立病院経営委員会委員長)
   上塚 芳郎先生(アイテック株式会社顧問、前東京女子医科大学循環器内科教授)
   関 丈太郎(アイテック株式会社代表取締役社長)
   高橋 淳(アイテック株式会社取締役執行役員)

大道 久先生(日本大学名誉教授、前東京都立病院経営委員会委員長)

 大道先生、本日はITEC病院運営研究会の対談にご参加いただきありがとうございます。本日は多様化する病院経営形態と公立病院の今後のあり方をテーマとして、特に大道先生が永年にわたり経営委員会の委員長として携われた東京都立病院の地方独立行政法人化の経緯なども含めてお話をお伺いできればと考えております。
私共もコンサルタントとして、公立病院間や公立病院と民間病院の再編統合に関与する機会が増える中で今後の参考になる議論ができれば幸いです。
それでは、座長の上塚先生、進行をお願いします。

上塚 『公立病院改革ガイドライン』に3つの視点が示されています。1つ目は、『経営形態の見直し』で地方独立行政法人化を含む経営形態などについて、2つ目が『再編・ネットワーク化』で病院間の統合などについて、3つ目が『経営の効率化』で黒字化の課題などについて示されています。

また、最近の新聞報道では新型コロナウィルス感染症を担うべき病院が本来の機能を果たしていないとの批判もみられます。
中小病院では人員配置も十分でなく、コロナ患者も受け入れていないことが指摘されています。
公立病院が本来担う役割は、へき地医療、救命救急医療、周産期母子医療、災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院などです。また、今回のコロナのような感染症も公立病院が担う医療であると考えています。
一方で、これらの政策医療を担うためには、費用がかかるため、多くの公立病院は赤字経営となっています。私は、公立病院だから赤字でよいとは思いません。

例えば、東京都の場合、病院事業に一般会計から毎年450億円程度の繰入金があります。重症化したコロナ患者の56%は、公立病院で治療を受けています。
確かに公立病院は、コロナのような感染症が蔓延している状況では、担うべき役割を果たしていると言えますが、今後、ポストコロナの時期にはどのような形態が望ましいのでしょうか。
公立病院は、政策医療を担うと同時に一般会計から多額の繰入金を受けながら、今後どのような経営形態を目指すべきなのかを大道先生にお伺いしたいと思います。

上塚 芳郎先生(アイテック株式会社顧問、前東京女子医科大学循環器内科教授)

大道 公立病院が担うべき医療の役割については、長い歴史があります。日本の医療は自由開業医制度のもとで発展してきました。
当初は、イギリスの国営医療などに代表される先進西欧諸国の医療体制、すなわち国が責任を持って国民の医療を担うべきという考えも参考とされましたが、日本は、自由開業医制度のもとで、国民の医療を支えていくという路線になりました。
このような流れの中で国や自治体はどのように医療に関わっていくかという議論を経て民間との棲み分けができたわけです。

したがって、民間病院が担う役割に対して公的医療は制限を受けてきた実態があります。昭和60年(1985年)の第一次医療法改正で、これまで自由開業医制度の中で自由だった病床が初めて規制を受けるようになりましたが、実は公的医療はそれ以前から病床規制を受けていました。
つまり民間に対して公的医療は範囲を限定されてきたのです。ただし、規制がある中でも、公的医療は自由開業医制度では対応できない医療分野にその役割がありました。

例えば、医業として成り立たない不採算医療が分かりやすい事例です。また、ここ30年から40年の間は、医療の高度化が進み、技術開発や多額の資金の確保などは民間では困難で、そのような医療分野を財政負担も含めて公的医療が担うようになってきた経緯があります。
今回のコロナで明らかになったのは、感染症はやはり民間では対応が難しく、公的医療が担う役割として認識されました。

本日のテーマの一つである東京都立病院も明治時代に当時の東京府の感染症への対応から始まったという歴史があります。やはり原点は、不採算医療に限らず、高度先進医療や新たな感染症への対応などの政策医療を公的医療が担うというのが分かりやすい理解ではないでしょうか。

上塚 ありがとうございました。以前、医療管理学の紀伊國献三先生が、日本の病院は8割が民間病院であるが支払制度はすべて公定で決定されており、診療報酬が公定にもかかわらず主たるプロバイダーは民間というユニークな制度、と言及されていました。
これも大道先生が発言された自由開業医制度の歴史からきたものと考えますが、いかがでしょうか。

大道 我が国では自由開業医制度のもとで国民皆保険制度が永年にわたり維持されてきました。この制度は我が国の医療制度の特色でもあり今後も堅持すべきと考えています。間違いなく税に基づいた社会保険で財政基盤は公的な部分で支えられています。
ただし、プロバイダーは民間が担っている部分が大きいのが事実です。

海外ではプライベートとパブリックがミックスして医療を提供するあり方が多様で、様々なケースがあります。公立病院を建て替える場合に、財源の調達や建設に関わる原資などを事業の中でどう考えていくかという例としてPFI事業があります。
PFIはイギリスがルーツで、日本に馴染むのかどうか多くの議論がありました。また一方で、プロバイダー同士が連携した事業も見られるようになってきました。公立病院間や公立病院と民間病院間の再編統合もそうですし、数年前に制度化された地域医療連携推進法人もその代表的な例です。

このような制度は、日本だけでなく全世界的にも議論されています。実際に機能させていく中で社会貢献できていくのか検証が必要かと思います。

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