セミナー・インタビュー

岩﨑 榮医師に聞く、今後の医師卒後臨床教育に求められること(前編)

更新日:2020/8/3

(写真左より)
ITEC病院運営研究会 代表 関 丈太郎(アイテック株式会社 代表取締役)
NPO法人卒後臨床研修評機構 専務理事 岩﨑 榮氏


(前編:社会の多様性に触れる、医師にとっての大切な時間)

地域医療を考えるなかで、医療者の確保が大きな課題となっている。医学部の卒業後、2年以上の臨床研修指定病院での研修を義務付けた卒後臨床研修制度(2004年~)の開始から15年が経過したいま、改めて今後の方向性やありかたについて、NPO卒後臨床研修評価機構 専務理事、岩﨑榮先生(略歴は最後に掲載)に話を聞いた。


卒後臨床研修制度、改めてその構築背景を考える

ITEC病院運営研究会 代表 関 丈太郎(以下、関) :地域における医師の偏在化が課題となっています。医師の働きかた改革(残業時間規制)もあるなかで、今後どう地域医療の担い手を確保していくか、そのヒントを得るべく本日は先生に色々とお話しをお聞きしたいと思います 。

岩﨑:発足から15年になりますが、まずは卒後臨床研修制度が構築された背景についてお話ししたいと思います。日本の医学教育では、大学医学部に入学してすぐ1年生から専門課程がはじまります。そのまま大学卒業まで医学部以外の学生との交流や、経済や政治、文学など様々な学問や人に触れる機会に大きく限りがあります。かつては大学卒業の後も医局に配属されていたため、関連する病院への勤務も含め、大学医学部の外との交流が狭い世界にいました。他の学部の場合ですと、大学に入るとまず様々な学問に接する期間が2年間(教養課程)あり、その後に専門的な過程で学びます。一方で、医学教育では若いうちにその後の人格を形成していく上で欠かせない、多様な考え方や社会に触れる過程がありませんでした。

:医学教育のなかで、医師の人格形成としてのリベラル・アーツの必要性は別の先生も触れていました。医学部は最初から専門課程なのですね。

岩﨑:そのとおりです。卒後臨床研修の2年間というのは、医学教育課程のなかでリベラル・アーツの補完としての背景も含めてスタートしました。この間に、多様な人や考え方に触れる機会をもつことで、その後の医師としての人格形成に寄与することを目的にしています。

:医学教育の課程をうかがい、大変に貴重な期間ということが分かりました。地方の病院でも根本的にはそうした意図を踏まえて卒後臨床研修を考えていく必要がありますね。

岩﨑:病院には卒後臨床研修だけでなく、教育を継続する場としても重要な役割があります。医師の偏在化という話のなかで、これからの地域医療を考える上で医師の「専門性」への偏重が大きな課題だと思います。総合的な診療ができてはじめて専門性が活きてきます。専門以外は診れない、という医師が当たり前になることは地域医療の観点から避けなければなりません。これに対し、卒後臨床研修機構では2020年4月から指定病院での「一般外来」を必修としました。総合外来ともいわれますが、卒後臨床研修の期間に多様な疾患にふれられる医師を育てていくことが重要という理解のもと、現在取り組んでいます。


続き(後編)

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