セミナー・インタビュー

小井土 雄一医師に聞く、災害医療の今後について

更新日:2020/6/29

(写真左より)
国立病院機構本部DMAT事務局長    小井土 雄一氏
ITEC病院運営研究会 代表  関 丈太郎  (アイテック株式会社 代表取締役)


課題山積の病院経営に対し、災害医療への備えは今後いかにあるべきか。災害対応を迫られる地域医療機関でのハード・ソフト両面での今後の準備について、新型コロナウイルス感染症による影響の視点も含め、DMAT事務局長である小井土雄一医師へ話を聞いた。

ITEC病院運営研究会 代表 関 丈太郎(以下、関):災害医療の今後についてお聞きします。まず簡単に、小井土先生のご略歴を紹介させて頂きます。
1984年埼玉医科大学卒業。1997年日本医科大学付属病院高度救命救急センター講師・医局長を経て2008年国立病院機構災害医療センター臨床研究部長に就任。2009年には同センター救命救急センター長を、そして2010年厚生労働省医政局災害医療対策室DMAT事務局長を併任されました。現在は防災学術連携体副代表幹事を併任され2020年4月から国立病院機構本部DMAT事務局長を務めておられます。
なお、小井土先生とはNPO法人日本・中東医学協会でも同じく理事としてご一緒しております。
本日は、災害医療の必要性がますます高まっている中で、今回の新型コロナウイルス感染症による今後の影響も含め、今後の災害医療におけるDMATの役割についてお話をお聞かせいただければと思います。


DMATについて

:はじめに、DMATについてお聞かせください。

小井土:DMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)は、専門的な訓練を受けた医師・看護師などからなり、災害の急性期(概ね48時間以内)に活動できる機動性を備えた医療チームです。日本での組織的な災害医療への取組みは、歴史的には国際支援・援助に始まります。この活動がベースとなり、1995年の阪神・淡路大震災の教訓をきっかけに、初めて日本全体で災害医療体制を構築することになります。対象とする災害医療にも様々ありますが、多くの場合で、消防や自衛隊などによる救助活動と連携し、医療活動を行います。過酷な大規模災害の場合、多くの負傷者に対応するために、どの負傷者を優先して治療するか、どの病院に搬送すべきかを判断する「トリアージ」も行います。
このように、災害医療の現場でDMATは重要な役割を担いますが、本年4月までは事務局も非常勤の体制でした。そして、危険の伴う災害現場に派遣されるDMAT隊員や、所属医療機関に派遣中の経営面でのサポートがないことは課題ですが、2020年4月から国立病院機構本部の管轄となり、事務局も常勤となったことを機に、今後はDMATの役割や活動を関係機関に全面的にPRしていきたいと考えています。

発足当初から、災害医療の現場の変化

: DMAT発足当時から近年の災害医療の変化について、医療現場からみてどのようにお感じでしょうか。

小井土:「コード・ブルー」などのドラマの影響もあると思いますが、DMATの認知度が上がるとともに責任も重くなってきたな、と感じます。災害対策基本法にDMATが位置づけられ、各種の防災計画に織り込まれるなかで、今では何かあればDMATに、という時代です。災害発生から48時間以内にDMATは現場へ駆け付け、医療活動を行えるのが大きな特徴です。平成の時代は地震災害に軸足を置いた対策が中心でしたが、近年では世界的にも気象災害が増加しており、日本も例外でなく毎年のように洪水、台風等が発生しています。気象災害については地震と異なり、気象予報でもある程度の予測が可能です。そのため、被災を受ける可能性のあるポイントで現地待機するなどの改善を重ね、今では災害発生から概ね8時間以内には被災地での災害医療活動にあたることが可能となりました。
こうした対応が可能となるのは、全国に15,000人強のDMAT隊員がおり、通常は地域の病院で勤務する傍ら、災害時には「一刻も早く人命を救いたい」という想いで現場に駆けつけてくれるためです。ですが、志だけで危険の伴う災害医療を継続することは困難ですので、DMAT事務局としてはそうした隊員が安心して職務に取り組めるような仕組みづくりを行っていきたいと考えています。是非、御社でも支援をお願いします。
特に、地域での安定した医療提供を考える上でも、大規模災害時の停電、断水などインフラへの被害を抑えながら、患者への継続した診療の提供や、避難搬送を強いられるケースなどが起きないようにする必要があります。平時からの災害医療への取組みや備えは、地域の診療機能や患者の安全を守るうえでも非常に重要であると考えています。

:当社も医療専門のコンサルティング企業として医療関連企業とのネットワークを活かして災害時に地域の医療を支援する仕組みを構築していくことを使命と考えております。


災害時の感染症対応について

:本年2月に新型コロナウイルス感染症対応として、DMATにダイヤモンド・プリンセス号への派遣要請がありました。ニュースなどを見ていて、「災害」の守備範囲がかなり広がった印象を持ちましたが、今回の経験を踏まえ、今後どのような対策が必要とお感じでしょうか。

小井土:災害医療はこれまで、地震や気象災害にどう対処するかが大きなテーマでしたが、今後は大規模な感染症への対応も必要となりました。本来、DMATはNBC災害(Nuclear:放射線、Biological:生物、Chemical:化学)の危険区域については活動対象範囲外と位置づけられています。ダイヤモンド・プリンセス号へはまだ実態の掴み切れない段階でもあり、今回は感染症専門家の同行と隊員への十分なPPE(Personal Protective Equipment:個人防護具)を前提にDMATも対応することになりました。
新型コロナウイルス感染症の様に、人材や機材・設備など供給体制を凌駕する需要(パンデミック)が発生した場合でも、災害対応は求められます。対応には強い指揮命令系統と調整機能が必要となります。DMATは調整力に長けており、迅速かつ組織的に初動対応ができるのは現在のところ私たちのみだと思います。今後もいち早くニーズを把握し、現場へ出動することになります。DMATでも感染症の対応能力を高めるための研修と訓練は必要になってくるでしょう。

:DMATの役割や社会的な使命がますます重要になってくることがわかりました。今後のさらなるご活躍を期待するとともに、当社もコンサルティング企業として先生の活動に少しでもお役にたてるよう新しいことに取り組んでいきたいと思います。本日は、ご多忙の中、お時間をいただき最新の事例も含んだ貴重なお話をいただきありがとうございました。

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